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変形性膝関節症 PAEG TOP PART-5-1 |
(1) 病態および原因 軟骨の磨耗、骨棘の形成、変形、関節可動域制限など関節構成体の退行性変化と増殖性変化を示すものである。原因が明らかでない一次性関節症と、原因が明らかな二次性関節症がある。一時性の特徴としては、膝の内反変形(O脚)を呈し、その原因としては、肥満体形や筋力不均衡などがある。 @一次性変形性膝関節症の要因 ・加齢 ・女性 ・筋力の衰え ・肥満 ・膝に負担の大きいスポーツ ・O脚や扁平足 A二次性変形性膝関節症の要因 ・膝周辺の骨折による関節軟骨の損傷 ・靭帯損傷 ・半月板損傷 ・膝蓋骨の脱臼 ・膝関節の捻挫 ・慢性の関節リュウマチなどがある。 |
(2)症状および診断 変形の進行状況を知るには、自覚症状が膝関節の変形状態を的確に反映している。 @初期症状 朝起きて歩き始めた時の膝の違和感を感が最も早く現れる症状である。膝に重が掛かる動作で痛み生じることはあるが、しばらくすると症状は消える。 A中期症状 痛みがはっきり自覚できるようになり、膝が伸びきらない曲りきらないなど膝関節の可動制限を生じるようになる。正座やしゃがむ動作が出来なくなる。階段の上り下り特に下りる時に痛みが強くなる。炎症がおきるうようになり、腫れ(膝に水が貯まる)、熱感を伴う。膝の力の掛かる動きをした時に、軋轢音が出るようになる。 B末期症状 日常生活に支障が出るほどの痛みになり、社会活動が思うように出来なくなり、うつ状態や、高齢者では認知症に陥りやすくなる人もいるようである。 この段階になると骨の変形もかなり進み、見た目でも変形が分るようになる。 もっと詳しく一次性の変形症の説明 長時間の歩行や動作開始時などで痛みが顕著に出る。両膝のに対する内反変形、あまり無いが外反変形の例もある。歩行時の立脚期に膝に内反動揺、外反動揺が生じこれが膝の変形を同化させる。 発生初期では滑膜の慢性炎症を伴う関節水症による腫脹が見られる。 X線では、軟骨の磨耗、関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の硬化像、骨棘形成、関節内の遊離体が認められる。下肢全体のX線像からFTA(大腿骨外側角)ミックリック線(下肢機能軸)を計測する。 進行度や変性部位を把握するには、関節造影や関節鏡も行う。 |
(3)治療 一度磨り減った関節軟骨は、もとの完全な形に修復されることはない。治療としては、痛みをとるまた膝の機能を高める(膝の屈伸可動範囲を改善)などを行い進行を遅らせることを目的に行う。 保存療法としては、薬物療法(非ステロイド性抗炎症剤NSAID・ヒアルロン酸の関節内注射・痛み強いやもうえない場合はステロイド剤の関節ない注射) 運動療法、温熱療法、装具療法などが基本的に行う。具体的には、関節軟骨の磨耗、関節裂隙狭小化などによる独自の症状については、関節の圧縮力(例えばO脚なら関節の内側軟骨が磨り減りやすい)この過重点の分散を図る。ひとつは足底の外側楔状板を処方することで、膝の内反を抑える。 なたない反変形に伴う下腿の回旋変形についても、回旋アライメントを修正することで顆重点の分散を図る。関節周辺の筋の伸張や短縮位を強いられる事から生じる筋腱の痛みについては、筋のマッサージや温熱療法、ストレッチなどを行う。関節の腫脹については冷罨法を行う。関節の可動域訓練を行い、更なる可動制限を防止する。関節の不安定性については、サポーターなどの着用を行う。 膝の痛みで歩行しなくなるなど、下肢筋の筋力低下を招くと関節不安定は更に進み痛みも強くなるため、筋力強化訓練を行う。特に大腿四頭筋は重要になる。 |
関節リュウマチ(膝) PAEG TOP PART-5-2 |
(1) 病態および原因 関節リュウマチにおいて膝関節は羅漢率が高い関節であり、左右対称に傷害されるのが特徴である。 |
(2)症状および診断 変形は内反変形に限らず外反変形を呈することも多く、大腿四頭筋の萎縮を伴った屈曲拘縮を示すことが多い。滑膜の増殖と関節液の貯留により腫脹が生じる。X線所見では軟骨および軟骨下骨の破壊が見られる。 |
(3)治療 軟骨や骨の破壊が軽度である時は、炎症を抑える目的で全身療法が主体となる。炎症が強くなり軟骨や骨の破壊が進行してきた場合は観血療法が適用になる。観血治療には、滑膜切除術、骨切術、人工関節置換術などがある。 理学療法的には変形性膝関節症に準じる。炎症が強い時は、関節可動域、筋力強化訓練も維持程度に行う。 |
前十字靭帯損傷 PAEG TOP PART-5-3 |
(1) 病態および原因 前十字靭帯は膝関節内にあり、構造の分りにくいため少し説明と、その役割について述べる。 大腿骨の外側顆の内側上方から、脛骨の中央より少し内側よりの前面に斜めに走る靭帯である。 @脛骨が大腿骨に対して、前にずれる内側にひねる動きを動きを防いでいる。 A膝がX脚にならないよに外方向のずれを防いでいる。 前十字靭帯(ACL)は、スポーツ活動中に損傷することが多く、ラグビーなど膝に直接外力が加わることで生じる接触損傷と、バレーボウルなどストップ、急激な方向転換、ジャンプなどを必要とする非接触損傷の二つの損傷タイプがある。受傷時の膝は外反、下腿外旋位になって損傷することが多い。 |
(2)症状および診断 受傷時に靭帯断裂音(プチッ)が聞こえることがある。受傷直後から、膝が腫れ、熱感をもち、関節を曲げることが困難になり、疼痛も強く、日常生活に支障をきたす。陳旧例では日常生活に支障ないことも有るが、ジャンプの着地、ストップ、ビボット動作などで膝崩れを生じる。この膝崩れを切り返すと、半月板損傷や関節軟骨の変性を合併し、関節水腫や疼痛などの症状が強くなり、日常生活にも支障をきたすことになる。 2〜3週間で晴れが引き、膝が曲るようになり歩けるようになるが、靭帯が断裂している場合、歩いていて膝がガクンと崩れるような症状がみられる。 KT−1000やKT−2000など膝動揺計による測定、単純X線、ストレス撮影、関節造影、MRI検査、徒手検査(前方引き出しテスト、ラックマンテスト、Nテスト)を行う。 |
(3)治療 前縦靭帯は血流が少なく自然治癒することはない、日常生活に支障がない、スポーツしないなどの場合は保存療法の選択しはあるが、先に述べた半月板の損傷などをきたすことになる。 一般的には観血療法になると考えられる。靭帯再建術が多い、再建材料としては自家腱(膝窩靭帯、半腱様筋腱、薄筋腱、腸脛靭帯など)、同種腱(新鮮凍結、凍結乾燥)、人工靭帯の3つがある。 |
後十字靭帯損傷 PAEG TOP PART-5-4 |
(1) 病態および原因 後十字靭帯は膝関節内にあり、構造の分りにくいため少し説明と、その役割について述べる。 大腿骨の前方内側顆の内側から、脛骨顆間窩隆起の後方に付着する。力学的強度は前十字靭帯の2倍であり、完全断裂の頻度低く、部分断裂になる事が多い。 脛骨が大腿骨に対して、後方にずれる、膝関節の内旋の動きを防いでいる。 後十字靭帯(PCL)は、膝屈曲位で脛骨上端部を前方より強打することで受傷する。交通事故でのダッシュボード損傷やラグビー、柔道などで膝から落ちた時に損傷する。 |
(2)症状および診断 受傷直後は、膝窩部痛を訴え、膝周囲筋の緊張も亢進し、打撲した脛骨結節付近に皮膚損傷を見ることも多い。膝関節の可動制限され、深い屈曲は脛骨の後方引き出しにより激しい痛み訴える。 関節血腫は軽度、側副靭帯の合併損傷がある場合は、損傷部位に圧痛を認める。 後十字靭帯の完全断裂の場合、膝90度屈曲位で脛骨落ち込み徴候(sagging sign)がみられる。新鮮例では膝周辺の筋緊張が亢進のためこの徴候がみえないことがある。 KT−1000やKT−2000など膝動揺計による測定、単純X線、ストレス撮影、関節造影、MRI検査、徒手検査(後方引き出しテスト、reverse pivot shiftテスト、)を行う。 |
(3)治療 後十字靭帯(PCL)は、ACLと比較して日常生活での問題は少ない事もある。後方動揺が1cm程度であれば、保存療法が適用であり、それ以上になれば観血療法になる。後外側の関節包や弓状靭帯損傷も合併している。ACLと同様の靭帯再建術となる。 |
内側側副靭帯損傷 PAEG TOP PART-5-5 |
(1) 病態および原因 膝の靭帯損傷では最も頻度が高い損傷である。主にコンタクトスポーツなどにて膝の外からの外反、外旋を強制された時に内側側副靭帯(MCL)は損傷する。単独損傷が多いが、合併症としてACL、PCL、内外側半月板の損傷を合併することがある。ACL+MCL+内側半月板損傷を合併します。これを不幸の三徴(Unhappy trias)と言います。 |
(2)症状および診断 MCLの大腿骨付着部付近に多く損傷部位があり、この辺りに圧痛があり、腫脹、熱感、膝を外反させると激痛あり、受傷直後は血腫、慢性化すると水腫が生じることがある。損傷の程度によりT〜Vに分類される。 T度損傷:MCLの前方縦走繊維の一部が断裂したもの。損傷部位に圧痛と腫脹は認められるが、外反動揺は見られない。 U度損傷:MCLの前方縦走繊維の一部が断裂、または靭帯骨付着部の一部剥離から、大部分が断裂伸張したものまでを含む、強い圧痛と腫脹、皮下出血、関節内出血を伴うこともある。徒手検査では外反動揺が陽性になる。 V度損傷:MCLの前方縦走繊維と関節包靭帯を含めた内側支持機構の完全断裂であり、前十字靭帯、内側半月板などにも合併症として損傷することが多くなる。徒手検査では外反動揺が陽性になる。 極めて強い症状となる。 単純X線、ストレス(外反にて)X線、関節造影、MRI、確定診断は関節鏡による。 |
(3)治療 T度損傷の場合では、疼痛が継続する一週間くらいは弾性包帯、テーピングなどで固定する。 U度損傷の場合では、他の靭帯や半月板などに損傷のない場合、2週間〜3週間ギブス固定をする。 その後、装具固定を行う。筋萎縮防止の目的から装具固定を行いながら筋肉強化訓練、関節可動域訓練が実施される。 V度損傷の場合では、関節不安定性が顕著、前十字靭帯損傷を伴う場合は、観血療法が適用となる。 |
外側側副靭帯損傷 PAEG TOP PART-5-6 |
(1) 病態および原因 外側側副靭帯(LCL)は、主にサッカーやラグビーなどで、膝の内側より外側への外力が働いた時(内反ストレス)を受けた時や、格闘技のけりなどで損傷する。 単独損傷はきわめて少なく、腸脛靭帯、後外側支持機構、膝十字靭帯まで損傷が及ぶことが多くある。重症例では腓骨神経損傷を合併することもある。 |
(2)症状および診断 軽度の症状では、LCLの部分的断裂、膝外側の痛みや腫れ、不安定感はない。中度であれば強い痛み膝の不安定感は生じる。重度では、完全断裂していることにより痛みや腫れは大きくなり、他の靭帯などにも損傷が及び、膝の不安定感、ぐらつき、膝崩れの症状が出る。受傷直後は関節内に出血を伴うことが多く、慢性化すると水が溜まりやすくなる。半月板や前十字靭帯などの合併損傷がないかも見分ける必要ある。 |
(3)治療 LCLはMCLと異なり、靭帯中央部で断裂は少なく、腓骨頭尖より骨片を伴い剥離骨折を生じることが多い、この場合はスクリューで固定する。 |
半月板損傷 PAEG TOP PART-5-7 |
(1) 病態および原因 半月板は膝関節の内側と外側に2個あり、三日月型の軟骨組織である。膝関節に加わる荷重などがい箇所に集中しないように分散させるまたクッションの働き、膝を安定させる働きがある。 この半月板に過重を掛けた状態で異常な回旋力が加わったり、急激な動きや無理な姿勢で膝を酷使した、膝を強く打ち付けたりすることで、半月板が欠けたり断裂する。サッカー、ラグビーで走りながら急に方向転換したり、野球の捕手が膝を深く曲げた状態で送球するなど生じる。スポーツ外傷が多い。高齢者であれば、半月板の老化や、軽度の負荷によっても損傷することがある。膝関節を外側に曲げたときは外側半月板、内側に曲げたときは内側半月板を損傷する。 断裂からの分類では、縦断裂、水平断裂、横断裂、合併型のL字断裂、加齢による変性断裂に分類される。 半月板は一度損傷した箇所が自然に再生することはありません、半月板の衝撃吸収力が弱まると、関節上下の骨が擦りあい、関節軟骨がすり減りやすくなります。すり減った骨のくずが、周囲の組織を刺激して炎症を起こします。 |
(2)症状および診断 特徴的症状は、階段の昇降やしゃがみこむ動作した時の痛み、膝の曲げ伸ばし時にキャッチング(引っかかり感)やクリックが生じる。ひどいときは急に膝が曲げ伸ばしも出来なくなるロッキングという状態になり歩けなくなる程痛くなることがある。関節内に炎症が起こり水が溜まって腫れたり、出血して血液が溜まることがある。ほとんどの例に大腿四頭筋の萎縮と関節裂隙での圧痛を認める。 徒手検査マックマレーテスト、アプレーテストを行う、単純X線では半月板は診断不可であり、MRI検査では断裂形態だけでなく変性状態も把握できる。関節鏡検査では100%の検査可能である。 |
(3)治療 半月板には、軟骨にかかるストレスを減らす重要な役目があり出来る限り温存することが重要である。以前は切除術が主な治療とされていたが、現在では温存を目的とした治療が重要視されている。 軽度の損傷の場合は、運動療法、足底板、ヒアルロン酸の関節注射などの保存療法を行うが、観血療法として縫合術と切除術が選択される。縫合は血管が存在する辺縁側1/3部の損傷に限られる。 それ以外の部位では切除術が適用となる。 |
膝蓋軟骨軟化症 PAEG TOP PART-5-8 |
(1) 病態および原因 膝の関節には膝蓋大腿関節と大腿脛骨関節の2つがあり、この損傷は前者の損傷である。膝蓋関節の裏側の軟骨が、大腿骨と何度もこすり合うと、その摩擦により軟骨がすり減り炎症が起こる。この炎症で軟骨が軟らかくなったり、膨化、亀裂、磨耗、繊維束形成、毛羽立ちを生じるものである。 原因としては、スポーツなどで膝を酷使することが原因の1つであり、長距離ランナーやジャンプスポーツに多く、大腿四頭筋の筋力不足や運動前のウォーミングアップの不足もその要因になる。 外傷により、膝を強打して関節軟骨を傷つけたり、膝蓋骨の脱臼や関節面の形状が悪いと起こりやすい。足や膝蓋骨の形状が悪い、歩き方なども原因になる。X脚、膝蓋骨の形状が悪い膝蓋骨が内側を向いている。膝蓋骨の位置(高い低い)、膝蓋靭帯が長いなど、このような原因に加えて、足先が内を向いた歩き方や、ハイヒールを履くと膝を曲げて立つことでこれも負傷の要因となる。 若い女性女性に多く見られる傾向にある。 |
(2)症状および診断 膝前面の疼痛、膝の不安感あり、膝蓋大腿関節の内側から膝蓋骨尖にかけての圧痛をみることが多い。特徴的な症状は以下の症状 @正座からの立ち上がりや、階段の昇り降り、スポーツなどで膝を使う運動をした時に、膝蓋骨周辺に痛み感じる。(膝を動かすとゴリゴリ音がする) A膝の皿を押した時に痛みがある。 B膝蓋骨の違和感、不安定感を感じる。(膝蓋骨の引っかかり感、膝を伸ばす時にきしむような音がする) 疼痛誘発テスト(apprehension sign)、(grimace tesuto)を行う。 より詳しく診断するのであれば、X線撮影、MRI検査、関節内視鏡検査などを行う。 |
(3)治療 基本的には保存療法である。症状悪化の防止のため、安静にする。サポータなどによる装具療法、消炎鎮痛剤などの薬物療法、内側広筋の筋力強化訓練、大腿四頭筋のストレッチを行う。 観血療法としては、Q角の改善を目的とした外側かい離術などが行われる。 |
離断性骨軟骨炎 PAEG TOP PART-5-9 |
(1) 病態および原因 骨の先端部分の軟骨部分が壊死して骨の一部といっしょにはがれることで起こるスポーツ障害である。10代成長期の男子に多い傷害で、女子の2倍とも言われている。高齢者にもみられる。 スポーツなどで膝関節に衝撃を加える運動を繰り返し行うことで生じる。 関節面の一部が軟骨下骨の部分で分離し、進行するとその部分が脱落して遊離体を形成する。原因としては、くりかえして関節面に加わる外力が局所的な血行障害をもたらし、その結果、骨化障害が生じ、徐々に軟骨片を分離していくと考えられる。 |
(2)症状および診断 初期の症状(完全に分離していない)は、運動後の不快感や軽度の疼痛程度であるが、更に進行すると、運動時痛が強くなる。脱落して周囲から分離すると遊離体を形成し、嵌頓、関節水腫、関節可動域制限と疼痛を訴える。X線像では初期に透亮像(病巣周囲に対して相対的にX線の透過性が大きく、陰影濃度が増して黒く移る部分)を道めるだけであるが、進行すると骨硬化を認め、分離が進んでいることがわかる。 |
(3)治療 症状が初期であり、骨や軟骨の変形破壊が軽度の場合、再生や回復が早い成長期などは、サポーターやギブスなどにて膝を固定し安静を保ち経過をみる。 病巣が不安定な場合は骨釘移植などにて固定する。ロッキング状態があり関節遊離体がある場合は摘出手術が行われる。関節内視鏡手術なら負担も少なく短時間で終わる。 |
膝蓋腱炎(ジャンパー膝) PAEG TOP PART-5-10 |
(1) 病態および原因 膝の伸展機構は、大腿四頭筋→大腿四頭筋腱→@膝蓋骨A→膝蓋腱(膝蓋靭帯と同じ)B→脛骨粗面 で構成されている。 この伸展機構のオーバーユーズにより、@(いちばん多い)A、B(膝蓋腱中央から脛骨結節付着部)にて微小断裂を生じ、その修復機転として、瘢痕や石灰化をきたす疾患である。バレーボールやバスケットなどのジャンプ動作の多いスポーツ競技で多く生じる疾患である。 |
(2)症状および診断 運動時に膝前面に痛みがあり、@ABの損傷部位圧痛を認める。日常生活では歩行など支障ないことが多い。ジャンパー膝の重症度による分類は以下の通りである。 フェーズ1:スポーツ活動後に痛み感じるが、スポーツには支障なし フェーズ2:スポーツ活動中・後に痛みあるが、スポーツに支障なし フェーズ3:痛みが常にあり、スポーツに支障あり フェーズ4:膝蓋靭帯の完全断裂 診断は、圧痛ポイントを調べる。X線撮影(レントゲン検査)膝蓋腱の痛み具合や膝蓋骨が上にズレていないか、膝蓋骨下端に薄い剥離骨折がみられることもある。より精密な検査はMRI検査、エコー検査を行う。 |
(3)治療 治療は、保存療法が主体である。 軽度であれば、安静を保ちながらアイシングを行い、炎症の治まるのを待ちます。膝が伸びた状態でテーピングやサポーターで患部を固定する装具療法も併用する。痛みが強い場合は薬物療法も行う。 症状が改善してきたら、ストレッチ、筋力強化を行う。 完全断裂では、観血療法を行う。 |
オスグッド・シュラッター病 PAEG TOP PART-5-11 |
(1) 病態および原因 子供の成長過程で柔らかい骨から硬い骨へと変わっていきます。この時期に運動などの刺激によって異常が生じると考えられる。これは骨の成長スピードに膝周辺の筋肉や腱の成長が追いつかないアンバランスな筋骨格構造となっていることが要因である。 具体的には、大腿四頭筋の過度の収縮をくりかえすことで膝蓋腱(膝蓋靭帯)の付着部である脛骨粗面が慢性の機械的刺激により脛骨粗面に運動痛と膨隆を生じる。病態は大腿四頭筋による過度の牽引力により、脛骨粗面の剥離損傷である。 同様にシンディング・ラルセン・ヨハンソン病がある。これは膝蓋骨の下の部分で同様の症状をみることがある。オスグッド・シュラッター病は12〜13歳が好発年齢であるが、これは11歳ごろに好発するといわれる。 どちらも活発な男児に多い。 |
(2)症状および診断 脛骨粗面に運動時痛や膨隆、圧痛を認める。X線所見では発病初期には剥離小骨片のような陰影を呈するが、長期経過例では大きな骨片をみることもある。骨端軟骨版が閉じる頃には症状は治まる。 骨粗面の隆起はそのまま残る。 |
(3)治療 治療は保存療法が主体、剥離骨片があり症状か緩解しない場合は手術にて骨片摘出を行う。 |
腸脛靭帯摩擦症候群(腸脛靭帯炎) PAEG TOP PART-5-12 |
(1) 病態および原因 腸脛靭帯は、大腿広筋膜とも呼ばれ、太ももの外側をおおう長い靭帯である。大転子という足の付け根の骨から、太ももの外側をとおり脛骨上部の外側に付着し、膝外側の安定を保つ役割がある。 この靭帯は、膝関節30度以上屈曲で膝関節の後方に位置し、伸展によって前方へ移動する際に大腿骨外側顆を通過(これを乗りこえる)このとき靭帯と大腿骨外側顆部との間で摩擦が起こり、これをくりかえす回数が多くなると靭帯が損傷する。ランニング傷害の代表的なものである。 O脚変形や回外足なども要因になる。 |
(2)症状および診断 動作時(ランニングなど)膝の外側に疼痛が有り、圧迫テストは診断価値が高い。このテストは大腿外側上顆部で腸脛靭帯を圧迫しながら、膝関節を屈曲から伸展に伸ばしていくと、屈曲30度付近で疼痛が誘発される。重症化すると膝の曲げ伸ばしが困難になり、膝を伸ばしたまま歩く状態になる。 |
(3)治療 治療の基本は保存療法が適用する。運動を減らし局所の安静が第一である。軽度であればしばらく休養で解消できるが、痛みが強い場合は、炎症を抑えるためアイシングを行ったり、消炎鎮痛薬の塗布、消炎鎮痛剤の内服がこうかある。その他温熱療法・電気療法なども効果ある。 観血的治療は再発を繰り返すものに行われることがある。腸脛靭帯の部分切除術,開窓術、部分延長術がある。 |
鵞足炎 PAEG TOP PART-5-13 |
(1) 病態および原因 鵞足とは、脛骨の粗面より内側に前から縫工筋→薄筋→半腱様筋の順番に後方に並んで、それぞれの筋の腱が脛骨に付着する。それが鵞鳥の足の形に似ている。 この3本腱が頚骨頭の内側で付着しているため、脛骨と腱の間にクッションの役目をする滑液包があるこれを鵞足包と呼ぶ、腱に繰り返し張力が働くことにより、鵞足自体や滑液包に炎症を起こして痛みとなる。肥満や、外反膝、回内足などのアライメント異常は鵞足炎を起こしやすい。 ランニングやサッカー選手に多くみられる。 |
(2)症状および診断 症状は運動時に鵞足部に疼痛を認める。診断としては、触診により膝関節内側裂隙より少し下鵞足部に圧痛や腫脹を確認出来る。 |
(3)治療 治療は保存療法になる。局所の安静とテーピングなどにて固定などを行う。 |
総腓骨神経麻痺 PAEG TOP PART-5-14 |
(1) 病態および原因 抹消神経の損傷には、@一過性の神経不動化(neurapraxia)ニューラプラシア、神経損傷のいちばん軽度のもので、神経線維などの損傷はない。正座による足のシビレなどもこれに含まれる。 A軸索断裂(axonotmesis)アクソノトメーシス、ひとつの神経単位(軸索)のみの断裂である。 B神経断裂(neurotmesis)ニューロトメーシス、神経のひとかたまりの断裂であり、その神経支配範囲の運動神経知覚神経が麻痺する。 総腓骨神経は、膝関節の後方で坐骨神経から分岐し、膝の外側にある腓骨頭の後方を巻きつくように走行している。この神経はその後外側腓腹神皮経・浅腓骨神経・深腓骨神経に分岐し、下に伸びる。 総腓骨神経は骨と皮膚・皮下組織な間に存在するため外部からの圧迫で損傷する。 原因としては、膝外側部の損傷時(打撲など)損傷時に合併したり、下肢の牽引などで仰向けに寝た姿勢を続けたり、ギブスの固定、コンパートメント症候群などにより誘発される。 |
(2)症状および診断 神経損傷や圧迫では、総腓骨神経の支配領域での運動神経の麻痺・感覚神経の脱失などが生じる。 特に深腓骨神経の支配下の、前脛骨筋・長母指伸筋・長趾伸筋の麻痺にて下垂足となり、歩行時は足を背屈できず。足先で接地するような歩行になる。 診断には、徒手筋検査・感覚検査・針筋電図検査・誘発筋電図検査がある。針筋電図検査では、運動神経伝達検査や感覚神経伝達検査も出来るが、回復状況の確認にも有効な検査である。またこの検査で損傷の程度@ABを鑑別にも使える。 |
(3)治療 回復できるものは筋の萎縮を予防すること、関節の拘縮を生じないよう予防する保存療法 自然回復できないものは、縫合・剥離・除圧・移植など神経修復術が行われる。 |
下腿コンバートメント症候群 PAEG TOP PART-5-15 |
(1) 病態および原因 下腿のコンパートメントは横下腿筋間中隔、後下腿筋間中隔、前下腿筋間中隔、下腿骨間膜によって四つの区画、@前側、A外側,B浅後側、C深後側コンパートメントに分けられて、その中にそれぞれの下腿筋が収納されている。@が前脛骨筋・長母指伸筋・長趾伸筋、Aが長腓骨筋・短腓骨筋、Bが後脛骨筋・長趾屈筋・長母趾屈筋、Cがヒラメ筋・腓腹筋がある。スポーツや交通事故などによる打撲、骨折、脱臼なをきっかけに、出血により組織内圧が上昇することで、細動脈の血行障害を引き起こす。長時間放置すると、筋腱神経組織が壊死に陥る生涯である。一旦壊死すると機能障害は永久的に残る。内圧上昇が著しい場合は、区画壁(筋間中隔などの切開にて、内圧を低下させる。 |
(2)症状および診断 各コンパートメント傷害により症状の出方は違うが、共通しての症状は、疼痛、腫脹、圧痛、硬結、運動時痛、神経麻痺などがある。 @前側コンパートメント傷害は、最も発生頻度が高い、疼痛、腫脹、圧痛は下肢前外側にあり、深腓骨神経領域の知覚障害(第1、2足趾間)、筋力低下は足関節背屈をつかさどる(前脛骨筋、趾伸筋)にある。 A外側コンパートメント損傷は、圧痛等は下肢外側にあり、浅腓骨神経領域の知覚傷害(下肢外側)、筋力低下は足関節外返しをつかさどる(長腓骨筋)にある。 B浅後側コンパートメント傷害は、圧痛は後方のふくらはぎにあり、腓腹神経領域の知覚神経神経障害、筋力低下は足関節のていくつをつかさどる(腓腹筋、ヒラメ筋)にある。 C深後側コンパートメント傷害とは、圧痛は後方の深部にあり、脛骨神経領域の知覚障害(足底内側)、筋力低下は(後脛骨筋、足趾伸筋筋力)にありる。 臨床検査の所見ではCPK、LDH、GOTの上昇、ミオグロビン尿の出現が見られる。 内圧の測定は、ニードルマノメーターで、針を各コンパートメントに刺して計測する。結果30mmHg以上は本症とみなす。XP診断により原因となる骨折や脱臼の確認できる。MRIで血腫の有無確認する。 |
(3)治療 応急的処置としては、RICE処置を行います。骨折などの原因を把握し整復などの対処を行う。内圧が50mmHg以上であれば手術適用される。30mmHgが数時間経過する場合は筋膜切開術を考慮する。切開した皮膚や筋膜は開放のままとする。 |
アキレス腱断裂 PAEG TOP PART-5-16 |
(1) 病態および原因 アキレス腱断裂は、踏み込み・ダッシュ・ジャンプなどの動作で下腿三頭筋が急激に収縮または、着地などにて急に筋肉が伸ばされた時に発生する。30〜50歳のスポーツ愛好家に多くはっせいする。腱の退行性変形も基盤にあると考えられる。部分断裂と完全断裂がある。 |
(2)症状および診断 受傷時は「後ろから足を蹴られたとか叩かれた様な衝撃を感じる・破裂したような音がした」などの訴えがある。受傷直後は体重をかけられずに歩行が出来ないが、しばらくすると歩行可能になることは少なくない、歩行可能でもつま先立ちできないのが特徴である。 アキレス腱断裂部に皮下の陥凹を触れ、同時に圧痛がある。 下腿三頭筋の把持テスト(トンプソンテスト)で完全断裂を診断できる。 画像検査では、超音波検査・MRI・X線検査(X線検査では不確定なことがある) |
(3)治療 ギブス固定や装具療法で回復を待つ保存療法と、観血療法としてアキレス腱縫合手術を行う、ギブス固定や装具療法は保存と同じ、但しこちらの方が筋力低下が少なくてすむ。 |
アキレス腱炎(アキレス腱周囲炎) PAEG TOP PART-5-17 |
(1) 病態および原因 アキレス腱炎は、オーバーユース症候群のひとつで、スポーツ傷害としては頻度が高いものである。繰り返す負荷により、アキレス腱に軽度の部分断裂、瘢痕化(損傷部の修復後に残る傷のあと)が生じており、腱の変性が起こる。 アキレス腱周囲炎は、アキレス腱はパラテノンという薄い膜でおおわれていますが、これは腱鞘と同じである。この部分に炎症が起きた場合をアキレス腱周囲炎という。腱鞘炎と同様である。 両者は同時発症があり、区別は難しい。 アキレス腱滑液包炎とは別のものである。 過大な負荷に加えて、腱の変性(加齢など)、下腿三頭筋の筋力および柔軟性の低下、回内足変形なども原因となる。 |
(2)症状および診断 かかとの腱付着部から2〜6cm部分のアキレス腱で腫脹、部分的肥厚、圧痛、アキレス腱にきしみ音も認められる。運動後や朝起きて歩き始めた時に痛みが強く、進行すると安静時も痛みある。足関節を背屈すると痛みは増強する。 診断は、視診触診、X線検査では分りにくいが、まれに石灰沈着している場合などがあらばわかることがある。MRIや超音波検査により変性の程度など詳細診断ができる。 |
(3)治療 保存療法が原則で、運動を控え安静にする。消炎鎮痛剤の服用や、外用薬塗布、ステロイド注射も有効である。テーピング、ヒールアップや扁平足の場合は足底板を使いアキレス腱の負荷を軽くする。 |
過労性脛部痛(シンスプリント) PAEG TOP PART-5-18 |
(1) 病態および原因 シンスプリントは、過労性脛骨骨膜炎、過労性頸部痛、脛骨内側症候群などとも呼ばれることがある。オーバーユース症の一種であり、ランニングやジャンプを過度に行った場合に発症しやすい傷害である。このまま進行すると疲労骨折となることもある。 誘因となるものとしては、下腿路面や薄くて硬いシューズでのランニング、o脚、回内足、扁平足、下腿三頭筋の柔軟性欠如、股膝足関節の柔軟性低下、足関節の可動制限などが上げられる。 下腿内側筋群の疲労による柔軟性の低下、特にヒラメ筋を主として後脛骨筋、長趾屈筋付着部が脛骨の骨膜を牽引し骨膜炎きたし、硬い内側に痛みを発生させる。 |
(2)症状および診断 症状は運動時痛や運動後の自発痛、圧痛、筋緊張の亢進がみられる。疼痛部位により前外側型と後内側型に分類される。前外側型は前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋が関与し、後内側型は後脛骨筋、ヒラメ筋が関与している。後内側方では脛骨内側に中下1/3に疼痛がある。 骨膜の炎症であるので、X線検査では分りにくいが、疲労骨折はみることはできる。この場合は拾う骨折と診断される。MRI検査では、脛骨の骨膜に肥厚した高信号変化(白色)がみられる。 |
(3)治療 運動を中止し安静にする。急性期はRICEを行い、消炎鎮痛剤を用いる。先に述べた誘因となっているものを解消する必要もある。テーピングなどにて損傷部の固定による保護を行う。 |
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